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MAGIC☆SALT☆PARTY 5

2020.11.17

神化論のオールキャラギャグです。

▼アイキャッチがじわじわくる目次はこちら

MAGIC☆SALT☆PARTY 1


MAGIC☆SALT☆PARTY 2


MAGIC☆SALT☆PARTY 3


MAGIC☆SALT☆PARTY 4



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「はーいみんな! 素敵に着替え終わったかなぁ?」
 
 きっかり三十分後、もう一度パーティー会場の広間に集まった全員を前にウィッチが声そうをかける。
 そしてウィッチは全員をざっと見渡し、「うんうん、いいんじゃない?」と満足そうに頷いた。
 
「みんなさっきよりすっごい馬鹿っぽい……じゃない、素敵な格好になったよ!」
 
 本音ただ漏れのウィッチに、コスプレする羽目になった全員はそれぞれに嫌な顔をする。
 
「やっぱ馬鹿っぽいよな、コレ。正直俺、ローズの姿じゃなかったら着てなかったぜ。だって俺の姿でこんなの着たら、俺のクールでかっこいいイメージが粉みじんになるって言うか……」
 
 うさぎの着ぐるみを装備したユーリは、遠い目をしながらそう呟く。彼のその呟きを聞き、「俺ならウサギでもいいのか!」と、ローズがごもっともな文句を彼に返した。ちなみにそんな彼はユーリの姿で浴衣を着ている。これもなかなかどうかと思うが。
 
「あ、あんたらなんてまだマシよ……アタシなんてねぇ……自分が悪いのはわかってるけど、こんな……っ!」
 
 そう言って、ローズたちの隣で羞恥に震えるのはマヤ。
 男二人は彼女の声を聞き、何か非常に気まずそうな表情でそちらを見遣る。二人の視線の先には、黒いウサ耳が哀愁漂う可哀想なバニーガールが立っていた。
 
「マヤ……」
 
「やっぱお前、何も考えずにその衣装持ってったんだな……」
 
 哀れみの視線を自分へ向けるローズとユーリに、マヤはやけクソな笑みで「そうよ、笑いたきゃ笑いなさい」と返す。
 
「寒いし恥ずかしいし馬鹿みたいだしでもう最悪よ!」
 
「だったら別の衣装にすりゃよかったのに」
 
 ごもっともなユーリの意見に、しかしマヤはキレ気味に「そうしたかったけど、衣装交換しに行った時にはもう他の衣装がなくなってたのよ!」と言い返した。
 
「そりゃ災難だが……でもお前それ、自業自得だしなぁ……」
 
「えぇ、だからそれはわかってるわよ。……ローズの顔でも中身ユーリだと、いちいち正論がむかつくわね」
 
「正論なのに?!」
 
 マヤの理不尽な怒りにユーリが「差別だ!」と訴えるが、マヤはそれを無視してアーリィに視線を向ける。アーリィもアーリィで、結構酷い事になっていたり。
 
「アーリィ……アタシが聞くのもなんだけど、どうしてその衣装を選んだの?」
 
「違うんですマスター、私こんなことになるとは思わなかったんです! 何かこう、ワンピース的なものかと思って選んだんです!」
 
 そう言ってめそめそ泣くアーリィは、紺のスクール水着を着ていた。ある意味マヤより酷い格好である。
 
「なのにいざ着たらなんか……これ水着でした!」
 
 本格的に泣き始めたアーリィを見て、マヤは『ホントおバカで可愛いなぁ』とか末期なことを考える。
 
「いいのよアーリィ、そういうおバカなとこがあなたらしくて可愛いから。すごい心が癒されるわ」
 
「うんうん、俺もいいと思う。アーリィちゃんはそういう路線でいいよ」
 
 マヤとユーリのそれぞれの言葉を聞き、さすがのアーリィも「何か褒められては無い気がする……」と不審感たっぷりに呟いた。
 
 マヤたち四人の格好もアレだが、ヴァイゼスの人たちも大概皆アレなのは言うまでもない。
 
「え、エル兄、やめてよね。僕の姿であんまりバカな格好しないでよ」
 
「なんで? かわいーじゃん、この黒にゃんこの着ぐるみ。レイチェルこそサンタクロースは無いだろ、サンタクロースは」
 
「だ、だってなんか着てみたかったんだもん!」
 
 エルミラは可愛い黒猫の着ぐるみを着て、レイチェルは時期を無視したサンタクロース衣装を着ている。
 そして近くでは、さわやかに可愛い女学生服のリーリエと何かエロい網タイツ女教師姿のアゲハがいた。
 
「わわ、わたし、セーラー服って着てみたかったんです……アゲハの姿なら、違和感ないですよね……ふふふっ……」
 
「私はかっこよく女教師です! どうですかね?! 似合います?!」
 
 かっこいいというよりエロいリーリエ(中身アゲハ)を、傍ではオッサンがデレデレになってガン見している。いや、見た目オッサンでも中身はユトナなのだが。
 
「いいねぇ、リーリエさんのあの格好。あ、中はアゲハなのか。まぁどっちでもいいけど」
 
「おいユトナ、てめぇ俺の姿で問題ある行動と発言はすんじゃねぇぞ」
 
 オッサン臭い発言がとてもよく似合うオッサン、もといユトナに、彼の姿になったララが小さく注意をする。そんな二人の格好はと言えば、ララはフリルやら何やらの装飾ゴテゴテの道化師の衣装で、ユトナはパンダの着ぐるみだ。
 
「あとユトナ、お前俺の姿でそれはねぇだろ……」
 
「え、だってクロウさん図体でかくてフリーサイズの着ぐるみしか着れなかったんですよ。クロウさんこそ何その怪しいフリル付いた衣装……俺が趣味悪いみたいに見られるから止めてマジで」
 
「適当に選んだらこうなったんだよ」
 
「嘘だ……ぜってぇ何か悪意があってあんな服選んだな……」
 
「ははっ、バレたか」
 
 アホ丸出しな姿で素晴らしい笑顔を自分に向けるララを衝動的にぶん殴りたくなったユトナだが、そうすると自分の顔が怪我するのでここは我慢することにした。
 
 体が変わってしまったことで、どうしても着替える事が出来なかった人たちもヴァイゼスにはいた。たとえばこの人たち。
 
「ジューザス様、大丈夫です! 私、絶対に服汚したりジューザス様の体をキズモノになんて致しませんから!」
 
「あ、うん……私も気をつけるよ」
 
「ジューザス様は何も心配する事ありませんよ! あなたは私が守り……あれ、でも私の体はジューザス様で、ジューザス様の体は私の体で……私は一体どちらをお守りすれば……?」
 
 エレスティンとジューザスは、やはりどうしても着替えは出来なかったらしい。パーティー衣装のままで、二人はコスプレ仮装集団の中に混じっていた。
 それともう一人着替えられなかったのは、幼女となってしまったヒスなのだが……
 
「かか、カナリティアお前、本当に着替えやがったな……っ!」
 
 メルヘンチックな衣装のままで大人しく皆の着替えが終わるのを待っていたヒスの目に、何故かいつもの白衣姿になっている自分の姿が飛び込む。それを見て、ヒスは顔を真っ赤にして乙女のように叫んだ。
 
「着替えるなって言ったのに! 俺の裸を見たな! いやああぁぁああぁ!」
 
「ヒスは大袈裟ですねぇ……だって丁度ミレイが用意した衣装の中に、あなたにぴったりの白衣があったので……やっぱりヒスはこの姿じゃないと、と思ったんですよ」
 
 カナリティアは「だから着替えちゃいました!」と言って可愛く微笑む。いや、ヒスの顔なので可愛いかは微妙だったが、とにかく悪びれる様子も無く彼女は堂々とヒスを辱めた。
 
「大丈夫ですって、眼鏡が無いから素っ裸になってもあんまりよく見えませんでしたもの」
 
「やめて言わないでくれ! 素っ裸になったとか聞きたくない!」

意外と純情な乙女だったヒスを彼をからかって反応を楽しむカナリティアは、しかし自分の後ろでさっきまでとは打って変わってつまらなそうな様子となっているレイリスの存在に気づき、そちらに近づいて声をかけた。

「レイリス、どうしたんですか? なんだか普通(?)のジャージ姿ですけど……」
 
 嬉々としてメイド服を着に走っていったはずのレイリスは、だが仮装集団の中では一番まともな黒いジャージ姿でふてくされた顔をしている。
 
「……ったのよ……」
 
「はい?」
 
「マギのでかい図体じゃメイド服が小さくて着れなかったのよ。……ちっ、クソつまんねぇ」
 
「あぁ……」
 
 ぶすーっと不機嫌な顔でそう話したレイリスに、カナリティアは苦笑を返す。するとその時、レイリスの元に復讐に燃える彼がついにやって来た。世にも恐ろしい姿で。
 
「ふはははははっ、どうだレイリス! 貴様の姿になった俺が、なにも出来ないと思っていたら大間違いだぞ!」
 
 そう言ってレイリスたちの前に姿を現したマギは、多分今一番可愛い格好をしていた。
 頭に黒いねこ耳を付けた彼は、ピンク色のフレンチメイド服を着てひどく勝ち誇った顔をしている。もしもマギが通常のマギだったら絶対にしないであろうその格好に、レイリスとカナリティアは数秒物凄い衝撃を受けたように硬直した。
 
「くっくっくっ……どうだ、ショックが大きすぎて声も出まいか……」
 
 レイリスの反応に勝ち誇った様子のマギは、人生で生まれて初めてのスカート(しかも超ミニ)とニーハイソのスースー感にちょっと内心で泣きそうになりながらも、しかしこれで自分は悪魔に勝ったのだと自分の勝利を確信する。しかしその考えは甘く、彼にとっての本当の地獄はまさにこれからだった。
 
「……ふっ、くくっ……あはっ、あはははははははははははっ!」
 
「!?」
 
 突如レイリスは肩を震わせ、大声で激しく笑い始める。その予想外すぎる反応にマギが「な、何を笑っている?!」と叫ぶと、レイリスは涙を流して笑いながら彼にこう答えた。
 
「だ、だって……あははっ……おっかしーんだもんっ……マギが自分でそれ選んで……くくっ……き、着たかと思うと……あははははははははっ! あはっ……げほっ、げほっ……く、くるしっ……あっはははははははっ!」
 
「なっ……!」
 
 予想と違いすぎる反応をするレイリスを見て、今度はマギが硬直する番だった。
 
「な、何故だ……貴様、だってこれはお前の体じゃないか……」
 
 呆然とするマギに、ひとしきり笑って落ち着いたレイリスはこう返す。
 
「えー? だって今はあたし、この体だもの。それがあたしの体? 違うでしょう、今それはマギ、あなたの体なのよ。だからあたしとは無関係☆」
 
「な、なんだと……っ!?」
 
 レイリスのまさかの反応に、マギは急激にこみ上げてきた羞恥に震えだす。そして本気で死にたくなっている彼に、レイリスは追い討ちをかけるようにこう言った。
 
「マギー、すっごい可愛いわよー」
 
「うるさい! 今の俺をマギと呼ぶな! ……くっ……こんなはずでは……」
 
「で、スカートの下はどうなってるわけ? えーい!」
 
「ひぃっ! や、やめろっ!」
 
 ついにレイリスはマギにセクハラまでし始める。見た目的にはレイリスにセクハラするマギという構図だったが、どっちにしろそれは異様な光景だった。
 
「……レイリス、あの様子じゃ元の体に戻った時のことは何も考えていませんね。元に戻ったらマギに殺されますよね」
 
「というか、あいつだけ戻る気全然無いよな」
 
 カナリティアとヒスのそんな会話は、心底楽しそうにマギを苛めるレイリスの耳には届かなかった。
 
 
 
「さてさて、君たちがバカみたいな格好に自ら着替えている間に、働き者な僕は色々と準備をしていたわけだけど」
 
 なにかいちいち癪に障るウィッチの話に耳を傾けると、彼はまた妙な事を皆に伝える。
 
「さすがにさぁ、この大人数の中で転送魔法が使えるの僕だけって色々不便じゃん? なのでちょっと転送魔法が使える助っ人を何人か呼んでおきました☆」
 
「助っ人?」

 マヤが怪訝な視線を彼へ向けると、ウィッチは可愛くウインクをしながら「そう、助っ人」と頷く。そうして彼は皆に、広間の扉に視線を向けた。
 
「おーい、さっさと入ってー!」
 
 ウィッチの微妙にやる気の感じられない呼びかけに反応して、扉が開かれて広間に数人どっかで見たことあるようなないような人物が入ってくる。
 
「あの人たちって……」
 
「えぇと、何か見たことあるような……そうでないような」
 
 そんなことを囁きあうマヤやローズの視線の先には、ウィッチが呼んだと言う助っ人三人が立っていた。
 
「どうも、食事していたのに無理矢理連れてこられたウネです。正直ちょっと迷惑で怒ってるけど、でも仕方ないから来た」
 
 本人の言うとおり右手にパン、左手に紅茶の入ったティーカップを持って、いかにも『食事中でした』状態のウネがまず自己紹介をする。そしてその隣では、古臭い木の杖を持った大柄な男が能天気な笑顔で皆に愛想を振りまく。
 
「やほー! 皆の頼れるお兄さん・アイフェさんでーす! なんか今楽しいトラブルの真っ最中らしいねー! いやー、お兄さんトラブルとか大好きだよー!」
 
 ウィッチ並のウザいテンションでそう挨拶をするアイフェに続き、最後の助っ人が口を開く。その最後の助っ人の”彼”を見て、レイリスが何か緊張したように顔を強張らせた。
 
「愛しいレイリスが大変だと聞いて勝手について来ましたラプラです。あぁ、それで私の愛しいフィアンセはどこに……?」
 
 どうも正規に呼ばれたわけでは無さそうなラプラは、自己紹介もそこそこに誰かを捜し始める。まぁ言うまでも無く彼の目的はレイリスだろう。だが今現在レイリスはマギでマギがレイリスなので、今回純粋に変態なストーカーから主に被害を受ける羽目になるのは不幸が続きっぱなしのマギだった。
 
「あぁレイリス、そこでしたか! なんですかその可愛い格好は! 私の為にサプライズですか?! そうですよね愛してますはぁはぁ!」
 
「な、なんだ貴様! やめろ、俺に近づく……ぎゃあぁああぁ!」
 
 事情を良く知らないらしいラプラが勘違いしてマギを性的に襲っているのは無視して、ウィッチは「そういうわけで、皆心強い助っ人さんとも協力してがんばろーね」と彼らしくない協力的な発言をした。
 
「それでさっさと終わらせてパーティーの続きやるったらやるよ!」
 
「あぁ、あんたまだパーティーする気満々なんだ……」
 
 ウィッチのやる気の理由に、マヤはちょっと疲労を感じる。正直この面倒が終わったらさっさと解散したいと思っているのは自分だけじゃないだろうと、マヤは思った。
 
 
 
「……ところでこの話は冒頭にも書いたがいわゆるお祭り的な内容の話なので、知り合っていないはずの人物とも普通に知り合いだったりするのはつまりアレな事情で何でもアリだからな訳で……」
 
「ミレイ、明後日の方向なんて向いて誰に一体何を説明しているんだ?」
 
「あぁアーリィ、気にするな。私の仕事をしただけだ」
 
「?」
 
 
 そんなわけで長い長い前振りだったが、彼らは三組に分かれて元の体に戻る為の材料探しに向かったのだった。
 
 
 
 
◆◇◆◇◆◇
 
 
 
 
「はーい、皆さんおっ待たせ! メローサ湖に転送完了!」
 
 アイフェのそう言う声を聞き、ローズはゆっくりと目を開ける。目を開けた彼の視界の先には、白い雪化粧を施された山々に囲まれた広大な青い湖が広がっていた。
 この場所にやってきたのは、ローズ、マヤ、ジューザス、エレスティン、カナリティア、ヒス、それとアイフェだ。比較的まともな人物が集まったメンバーである。
 
「はぁ……転送は一瞬だからよかったが、ここからが面倒だな。頑張らないと」
 
「って言うか、寒いっつーの! 頑張る前に凍えるっ!」
 
 ローズの隣で、確かに寒そうなバニーガール、もといマヤが体を震わす。
 メローサ湖は雪の降り積もる標高高い山岳の中の山と山の間に大きく広がる湖だ。とにかく普通に寒いので、バニーガールが来ていい場所ではない。そもそもバニーガールがその格好のまま外で歩いちゃいけないような気もするが。
 ローズもローズで浴衣なので、「確かに凍えるかもな」と自分の腕を摩りながら言った。
 
「お嬢さん、寒いのならオレの上着を貸そうか?」
 
「てめぇ上着着てねぇだろうが」
 
 上着着てないどころかノースリーブな服で微妙に寒そうなアイフェの意味不明な優しさを辛辣に断り、マヤは「早く用事済ませて帰りましょう!」と叫んだ。
 
「そうだね……出来れば私も早くに用事を済ませて帰りたいけども」
 
 ジューザスが既に疲れきった様子で、「でもそういうわけにはいかないんだろうね」と呟く。何せ相手は魔物の中でも手ごわい竜なのだ。本来ならバニーガールとかドレスとか浴衣とか、そんなふざけた格好で挑む相手ではない。
 
「まぁ何とかなりますよ、きっと」
 
「カナリティア、あなたなんでそんな前向きになれるの?」
 
「前向きと言うか、なるようになるしかないなーという気分でして」
 
「な、なにそれ……もっと危機感持ちましょうよ」
 
 微妙に適当なカナリティアにエレスティンは呆れつつ、彼女は湖に視線を向けて「それにしても」と呟く。
 
「水竜……本当にここにいるのよね? すごい静かで、とても竜がいるとは思えないわ……」
 
「いるとしても、どうやってこのでかい湖からそいつを誘い出すんだ?」
 
 ヒスのごもっともな疑問に、全員が答えられずに沈黙する。
 そうしてローズたちは早速大きな問題となる壁にぶち当たるのだった。
 
 
◆◇◆◇◆◇
 
 
 
 
「お待たせ、エルドーラ火山に到着した」
 
 ウネが自身を含めて火山に転送したメンバーは、ユーリ、アーリィ、レイリス、マギ、ユトナ、ララ、そしてラプラだ。
 微妙に問題児ばかりの彼らがやって来た場所は、僅かに灼熱を帯びる岩肌が連なる火山。その山中ど真ん中に転送してきた彼らは、ここにいるはずの火竜の鱗を手に入れるのが目的だった。
 
「よし……ローズからでけぇ剣借りてきたことだし、これで竜ぶっ叩きにいくか」
 
 とりあえずローズと武器も交換したらしいユーリは、妙に張り切った様子で周囲を見渡す。”大剣持ったうさぎの着ぐるみ”というビジュアルはめちゃくちゃな彼だが、でも体を交換してしまったわりには妙に頼もしくもあった。
 
「でもユーリ、無理はしないでね。相手は火竜、当然強いだろうけど火属性なら私の魔法がよく効くはずだから私も頑張るよ」
 
 見た目がローズになっても自分に優しいアーリィに感動しながら、ユーリは「わかってるって」と返事をした。
 
「そういやあの子は魔法が使えんだよな。心強い限りだぜ」
 
 ララがアーリィを見ながらそう感心したように言うと、すかさずラプラが「私も使えますよ」と自分をアピールする。
 
「しかし残念ながら私が得意な属性は土……火竜と特に相性がいいというわけではないのですが……」
 
「あ、あぁ……お前はそれより、”それ”は一体どういう状況なんだよ……」
 
 ラプラの方を見て、ララは何かドン引きする反応を見せる。それもそのはず、ラプラは現在地面に腹ばい状態でマギに足で踏みつけられていたのだ。踏みつけられながらもラプラは最高の笑顔なもんだから、普通の人ならこの光景はドン引きする。
 
「えぇと、これはこういう愛のプレイですよね、レイリス♪」
 
「だから俺はレイリスじゃねぇと言ってるだろうがこのクソ変態、プレイとか言うな」
 
「ふふふ、あなたの足に踏まれるなら私は最高に幸せですよレイリス。むしろあなたの靴になりたい……靴底でもかまいません……ふふふっ」
 
「ひいぃぃ気持ち悪いことを言うな!」
 
 マギの話をまるで聞いていないラプラを見て、ユトナがウネへと問いかける。
 
「ねぇウネさん、あの頭可哀想なお兄さんは俺らの状況わかってんの?」
 
「……一応あなたたちに会う前に事情の説明はしたけど、『レイリスに会えるなんてはぁはぁもう我慢できません早く私の女神に会って匂いを嗅ぎたいです』とか何とか言って私やウィッチの話を全く聞いてくれなかったの。だからもう彼に説明は諦めた……というか、怖くてなんかもう関わりたくなくて……」
 
 げんなりした様子で、ウネはそう説明する。それを聞いたユトナも、ついでに本物のレイリスもげんなりというかぐったりした。
 
「おいレイリス、そろそろマギ助けてやれよ。さすがに可哀想だろ、あれは」
 
「絶対イヤ。って言うかあたしをレイリスって呼ばないで。ラプラにはバレたくないんだから」
 
 マギを哀れんだララが本物のレイリスに何とかしてやれと言うが、レイリスもさすがに本物のド変態は苦手らしく、マギを犠牲にして自分は助かろうと言う発言をする。
 
「いい機会だわ、あいつも少しはあたしの苦労を知るべきなのよ」
 
 そう言うとレイリスは自分の手にカスパールを鎌形状で召喚する。もうすっかりマギの全てを自分のものにしちゃった彼は、こっちもユーリ同様に体を交換したわりには戦闘で頼りに成りそうな感じだった。
 
「さて、だ。火竜をまずは探さねぇとな」
 
 ユーリがそう言って遠くに見える山の山頂付近へ視線を向ける。
 こちらのチームもこちらのチームで、まずはターゲットを探すことから始まるようだった。
 
 
 
 
◆◇◆◇◆◇
 
 
 
  
 最後の三組目が転送魔法でやってきたのは、薄暗い森の奥深くにひっそりと洞穴を開けるツィエルド洞窟前。
 
「はいはーい、到着だよ皆。……はぁ~あ、マヤと一緒じゃないなんてつまんないなー。早く終わらせたいけど、ちょっとやる気でないよー」
 
 メンバーを転送魔法で導いたウィッチは、そう本音を堂々と言いながら洞窟の入り口を見遣る。光が奥に一切見えない洞窟の入り口は、もうそこから既にひんやりと湿った空気が漂っていた。
 ウィッチと共にここに高純度マナ水を求めてやって来たメンバーは、ミレイ、エルミラ、レイチェル、アゲハ、リーリエだ。ウィッチが暴走しても誰も彼を止める事は出来ないと言う意味では、彼らが一番不安のあるメンバーだったり。
 
「ウィッチ様、この洞窟には低級なものとはいえ魔物が出没致します。お気をつけ下さい」
 
 ミレイが主を心配してそう注意を囁くが、しかしまぁウィッチなので大丈夫だろうと他のメンバーは皆思う。案の定ウィッチは「僕を誰だと思ってるの? 平気だよ」と余裕の笑顔でミレイに返事を返した。
 
「僕は天下のウィッチ様だよ? 敵なんて出たらこの洞窟ごと吹っ飛ばしてあげるよ!」
 
「ど、洞窟ごと吹っ飛ばすのはやめて神サマ!」
 
 洞窟を吹っ飛ばされたら自分たちも確実に大変なことになるので、エルミラが不安に青ざめながら慌てて止める。ウィッチは「冗談だよ」と、結構本気だったことを暗示する笑みをエルミラへ返した。
 
「……絶対冗談じゃなかったぞ、あの神サマ……」
 
「ウィッチさん、頼りになるけど正直ちょっと不安だよね」
 
 レイチェルも不安にじませる表情で、そう小さく呟く。たとえ魔物が出ようとウィッチならば余裕で倒せるのだろうが、その代わりに周囲などお構いなしの彼なので、レイチェルたちにはある意味ウィッチこそが一番の脅威なのかもしれない。
 
「わ、わたしたち、無事に水を持って帰れるのでしょうか……? な、なんだか、むしろ帰れないまま終わりそうな予感が……」
 
「だからだいじょーぶだって、なんてったってこのチームには僕がいるんだからね! えっへん!」
 
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MAGIC☆SALT☆PARTY 6

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