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神化論クリスマス小話再録(1)

2020.12.24

神化論after更新しました!

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神化論 after


クリスマス絵は今年は描けなかったですね……
クリスマス絵は間に合いませんでしたが、近々なにか冬っぽい絵を描きたいと思います。

先日言っていた人外ちゃん漫画も描きたいですし…
人外ちゃんで冬っぽい絵を描こうかな。


今日の落書きは「徒花」のアネモネです。(寒そう…)

メリークリスマス!

以下、神化論のクリスマス小話再録(前編)です。
後編は明日更新します!


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【クリスマスな話】
 
 
 
 朝起きてウィッチ様の元に行くと、ウィッチ様が妙な格好で張り切っていました。ウィッチ様は可愛い笑顔で笑っていましたが、全く微塵もいい予感がしません。
 私は朝からどこか遠くに逃げたくなりました。
 
 ――ミレイの日記より
 
 
 ある日ミレイがウィッチの元に行くと、彼は全身真っ赤の服を着てノリノリで鼻歌を歌っていた。
 
「フンフフンフ~ン♪」
 
「ウィッチ様、その格好は一体……」
 
「あ、ミレイ!」
 
 ウィッチはミレイに気づくと、「はい、ミレイはこれ着て!」と茶色い着ぐるみをミレイに押し付けた。ミレイは怪訝な顔をしながらも、謎の着ぐるみを受け取る。
 
「ウィッチ様、これは?」
 
「それはトナカイの服! いいから早く着替えてよ!」
 
「は、はい……」
 
 ミレイはわけがわからないまま、ウィッチに促されてトナカイの服に着替えた。
 
 
「……ウィッチ様、着替えましたが」
 
 妙な格好(トナカイのコスプレ)をさせられ、ミレイは陰鬱とした顔でウィッチの元に戻ってくる。
 
「あ、ミレイ可愛い!」
 
 しかしウィッチのこの一言でミレイはすっかり機嫌が良くなった。
 
「ほ、本当ですか?」
 
「うん、すっごい似合ってる。ところでさ、ミレイ」
 
「はい、なんでしょうか?」
 
 ウィッチの真っ赤な衣装は一体なんなのだろと思いながら、ミレイは首を傾げる。するとウィッチは最高の笑顔でずばりこう言った。
 
「ミレイ、今日は僕の為に汗水たらして頑張ってるヴァイゼスの下僕どもに優しくて可愛い僕からクリスマスプレゼントをあげようと思うんだ!」
 
「……?」
 
 クリスマスプレゼント、と言われてもミレイはピンとこない。「なんですか、それは」と言うミレイに、サンタクロースのコスプレをしたウィッチはちょっと頬を膨らませた。
 
「もう、ミレイはクリスマス知らないの? 勉強不足だよ~」
 
「は、はい……申し訳ございません」
 
「ま、いいや。とにかく今日はこのウィッチクロース様から、ジューザスたちに素敵な夢をプレゼントしようと思ってね!」
 
「は、はぁ……」
 
 ウィッチのよくわからない張り切りに、とりあえずミレイは頷く。そしてウィッチは気合を入れてこう叫んだ。
 
「それじゃあミレイ、夜になったら素敵な夢を皆にプレゼントしに行くよ!」
 
「あ、今じゃないんですか」
 
 ミレイの冷静な突っ込みは、しかしノリノリでまた鼻歌を歌いだしたウィッチには聞こえなかった。
 
 
◇◇◇
 
 
【リーリエの夢】
 
 
「……あれ、わたし」
 
 リーリエは故郷の村を一人で歩いていた。砂漠の真ん中にあるオアシスの村だ。あまりいい思い出のない場所だけど、でも生まれ育った場所なので懐かしい。だけど変だと彼女は感じた。村に人影が無いのだ。どうしてだろう。
 
「あ……」
 
 砂漠の砂を懐かしいと思い踏みしめながら歩いていると、今まで周囲に誰もいなかったのだが、突然前方に人影が現れる。村では”異端”だと言われて忌み嫌われていた彼女だ。もしかしたらまたいじめられるかもしれない。反射的にリーリエは隠れようとするも、しかし彼女の目に映った人影の正体で、彼女は隠れるのをやめた 。
 
「やあ、リーリエ」
 
「ディス……」
 
 前方からやってきたのは痩身で褐色肌の青年。彼は優しい笑顔でリーリエに手を振った。
 
「どうしたの、君が外を歩いているなんて珍しいね」
 
「あ、あの……わたし……」
  
 懐かしい青年は、リーリエの初恋の男性。多くのものにいじめられ、家族にも見捨てられた彼女に、都会とこの村を行き来する商人の彼は、事情を知らないという理由もあるが唯一リーリエに優しく接してくれたのだ。
 
「あ、そうだ。リーリエ、今日は君にプレゼントがあるんだ」
 
「え! わわわ、わたしにですか!?」
 
 初恋の人を前にテンパるリーリエだが、ディスは気にせず背負った布袋をあさって何かを取り出そうとする。なんだろうと真っ赤な顔で彼女が心臓をバクバクさせていると、ディスは「これ」と袋からとんでもないものを取り出した。
 
「ひっ!」
 
 リーリエの表情が恐怖に引きつる。彼の手には元気にうごめく青の斑点模様がある緑色の昆虫。その大きさは赤ちゃんの拳ほどもある。
 
「これ、今西の都で流行っている食虫でね、とても栄養価が高くて美味しいんだよ。リーリエはいつも顔色悪いから、君の為に新鮮で元気なのをいっぱい仕入れてきたんだ。これね、生け食いするのが一番なんだって」
 
 笑顔で「さぁ!」と虫を進められ、リーリエは悲鳴と共に夢の中で気絶した。
 
 
【ララの夢】
 
 
 二人がいる光景は幸せだった。たとえ夢の中でも。
 
「お父さん!」
 
 妻に良く似た顔の可愛く幼い娘がララに抱きついてくる。
 
「ねぇお父さん、お人形買って!」
 
「こらエミリ、お人形ならこの前お母さんが買ってあげたでしょう?」
 
 自分の隣でそう言い怒る妻に、ララはデレデレの笑顔で「まぁいいじゃねぇか、人形くらい」と言った。
 
「もう……あなたはエミリに甘すぎですよ」
 
 そう言ってちょっと睨む妻と、「やったー! お父さん大好き!」と言う娘に挟まれ、ララは困った顔をしながらも頭の中は幸せでいっぱいだった。
 が、幸せいっぱいだったララにこれからとんでもない事態がおこる。小さかった娘が突然大きく成長したのだ。そして悲劇が。
 
「ところでお母さん、わたしの洗濯物お父さんのと一緒に洗わないでよ」
 
「なっ!」
 
「あらごめんなさい、エミリももうそういうの気にする歳になったのね」
 
「ちょ、待てお前たち!」
 
「あとお父さん、今度お父さんに紹介したい人がいるから家につれてくるね」
 
「紹介したい人だぁ?! まさかそれって……」
 
「あ、ジェダス君ね。彼かっこいいわよね~」
 
「かっこいいだと!? てかローザ、お前はなんでそいつのこと知ってるんだ!」
 
「お母さんには前に紹介したの、彼のこと」
 
「か、彼!? 彼ってなんだ彼って!」
 
「エミリ、彼と結婚考えてるんですって」
 
「けっ……!?」
 
 ”可愛い一人娘の結婚”という言葉が一撃必殺となり、ララは「父さんは結婚なんて認めんぞー!」と叫びながらその場にぶっ倒れた。


【レイリスの夢】
 
 
「……なんであたし、この村に……」
 
 見覚えのある景色は、家族を失った村。だけど目の前の光景の中にはまだ家がある。
 
「夢……?」
 
 疑問に思いながらレイリスはとりあえず家に入ろうとする。すると誰かがレイリスを背後から呼んだ。
 
「レイリスちゃん」
 
「おじさん!」
 
 そこにいたのは自分が憧れた旅人。懐かしい笑顔に、レイリスは驚き彼の元に走る。
 
「おじさん、どうしてここに……」
 
「ふふ、そんなことよりお兄さんがレイリスちゃんを探していたよ」
 
「兄?」
 
 レイリスが怪訝な顔をすると同時に、どこからか叫び声が聞こえてきた。
 
「れーいーりーすー!」
 
「お兄ちゃん!?」
 
 物凄い勢いでこちらに駆けてくるのは、今はもういないはずの少し歳の離れた自分の兄。レイリスは唖然とした表情で、兄の登場を見つめた。
 
「なんだレイリス、ここにいたのか~。駄目だろ、勝手にいなくなったら」
 
「うそ……本当にお兄ちゃん?」
 
「なに言ってるんだレイリス、俺はお前のお兄ちゃんだろ?」
 
 そう言って笑顔を向ける兄の姿に、レイリスは懐かしさと嬉しさのあまりちょっと本気で泣きそうになる。そんなレイリスを兄は突然力の限り抱きしめた。
 
「んぐっ!」
 
「もう離さないぞレイリス! お兄ちゃんとずっと一緒だからな!」
 
「ちょ、くるしっ……死ぬ……っ!」
 
「レイリスもすっかり母さんに似て美人に育ったな! だけどこんなに可愛くて美人でお兄ちゃん想いで優しいレイリス、一人にしといたら変な奴に狙われて誘拐とかされちゃうかもしれないからお兄ちゃん心配なんだよ! お兄ちゃんが守ってやらないと!」
 
「き、気持ちはうれし、けど……はなして、くるし……」
 
「兄ちゃんはどこの馬の骨かわからん男に可愛いレイリスは渡さないぞ! むしろ兄ちゃんと結婚しようレイリス! それがお兄ちゃん的に一番安心できる!」
 
「な、何言ってんのおま……っ」
 
「さぁレイリス、善は急げだ! 俺たちはずっと一緒だって、お兄ちゃんと誓いのキスを……」
 
「ひっ……いやあぁぁぁぁぁぁっ!」
 
 
 
【ユトナの夢】
 
 
 ユトナの夢は最初からクライマックス……いや、最初から悪夢で始まった。
 
 目の前で微笑むのは失ったはずの愛しい妹。それと、妹の肩を抱いて笑顔で自分を見るユーリ。
 ずっと会いたいと願っていた妹は優しい笑顔を湛えながら、兄であるユトナを絶望のどん底に叩き落す一言を発した。
 
「お兄ちゃん、わたしユーリと結婚することにしたの」
 
「いやー、そういうわけなんだよなー。あっははー」
 
 妹が照れたようにユーリの腕を掴み、ユーリは能天気に笑いながら妹の肩をさらに抱き寄せる。物凄い悪夢だった。
 
「これからはお前のこと義兄さんって呼ばねーとな」
 
 ユーリがニヤニヤと嫌な笑みを湛えて、そうユトナに告げる。そして彼は唖然とするユトナに向かって、最高の笑顔でこう言った。
 
「よろしく、義兄さん。妹さんは幸せにするぜ」
 
「だれがにいさんだあぁぁぁぁぁっっ!」
 
 笑顔のユーリに「お前に妹をやれるかぁ!」と叫んでブチ切れて刀を振り回して、そっからのユトナの記憶は無い。
 
 
【エレスティンの夢】
 
 
 もうはるか昔に思い出になったはずの庭で、彼女は暖かな風を受けながら一人佇んでいた。
 
「懐かしい……ここは、まだあの子がいた時に住んでいた……」
 
 エレスティンが感傷に浸っていると、彼女を呼ぶ声が聞こえる。聞き覚えがあるその声に、エレスティンは思わず振り返った。
 
「いたいた、エレ姉ちゃん!」
 
「……リディ」
 
 エレスティンの目が驚愕に見開かれる。”あの日”から変わらない姿の小さな弟が、そこには立っていたのだ。
 
「ど、うし……」
 
「姉ちゃんどうしたの?」
 
 弟は首を傾げながらエレスティンの元へやって来る。そして彼は少しはにかんだ笑顔で、「えへへ、姉ちゃんと外で遊びたかったからまた外出てきちゃった」と悪戯っぽく言った。
 
「エレ姉ちゃん、今日は森のもっと奥に行ってみようよ! 姉ちゃんと一緒だったらもっと奥まで行けると思うんだ!」
 
「り、でぃ……」
 
 無邪気に笑う弟の姿に、エレスティンの視界が滲む。そして彼女はついに堪えきれなくなり、ぽろぽろと涙を零しながら弟を力いっぱい抱きしめた。
 
「リディ!」
 
「げぇっ! ねえ、ちゃ……っ」
 
 抱きしめると同時に骨が粉砕されるような嫌な音が聞こえ、弟は嫌な感じの悲鳴をあげる。そう、彼女は忘れていたのだ。自分が熊だって素手で殴り倒せる力の持ち主だという事を。
 
「ね、姉ちゃんってやっぱり……熊の生まれ変わりだよ……」
 
「はっ! り、リディ! ごめんなさい、私……いや、リディ目を開けてっ!」
 
 自分の腕の中でぐったりして完全に気をうしなってる弟に気がつき、エレスティンは青い顔で「いやぁぁお願いしっかりしてぇぇぇっ!」と絶叫した。


【後編へ続く】

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